タルロ

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フィルメックス2本目はペマツェテンの新作『タルロ』です。
冒頭いきなり訛りのある中国語で延々と毛語録が暗唱されます。
あとはチベット語。
ペマツェテン監督はチベット語でチベット族が撮る映画の第一世代の
監督です。作家でもある彼は自分の小説を映画化することが多く、
この『タルロ』もそう。
さすがに深いですね。観終わって、ずっしりとくるものがありました。

遊牧民のタルロが公安に作れと言われるのは第二世代身分証。
これ、私も最近知ったばかりで、2004年に始まった機械でスキャン
できる身分証。タルロはそれまで身分証を持たないで暮らしていた
んですね。
身分証って14歳ぐらいで作るらしいですから、ろくに学校にも行かず、
山で暮らしている彼にとっては必要なかったのでしょう。
それが作れと言われて、そのためには証明写真を撮らなくてはなら
ないというので町に出かけて行っために、それまでの彼の生活が大きく
変わり、なにもかも失くしてしまう。
重い、切ないお話でした。

ペマツェテン監督の『静かなるマニ石』は牧歌的な微笑ましい話だったけど
『オールド・ドック』といい、この『タルロ』といい、グサッとえぐられる作品です。
『静かなるマニ石』で少年僧が弟に、「これからは北京語ができないと出世
できない」と言われるシーンがあるのですが、
タルロは中国語は毛語録が暗唱できるだけで、普段は全然喋れないでしょう。
一方、北京電影学院を出た監督は非常に美しい中国語を話すエリートです。
それなのに、こういう普通のチベット人の心に寄り添った作品を撮り続けているのが
この監督のすごいところです。
身分証を作ることが自分を失うことになる、なんて痛烈な皮肉なのに、
ちゃんと検閲も通しているところもすごい。

長回しに耐える存在感あるタルロ役はチベットの趙本山ともいうべき存在の、
彼が出てきただけでチベット人は笑うという有名なコメディアンだそうですが
ニコリともしないシリアスな演技は実に見事でした。

彼をだます理容室の女を演じたのは有名な歌手で、
この役にふさわしい年齢相応に見えるよう、体重を数キロ増やしての出演とか。
そういえば、ペマツェテン監督のカメラマンだったソンタルジャ監督の『河』の
お母さん役も有名な歌手とのこと。
チベットは女優より歌手のほうが人材豊富なんでしょうか。




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