『烈日灼心』と『心迷宮』

今年の上海国際映画祭グランプリと3人が主演男優賞に輝いた
『烈日灼心』をようやく鑑賞。
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監督は数年前このブログで絶賛した『李米的猜想』の曹保平。寡作ですね。
警察官が犯罪を追っていく過程で意外などんでん返しがあるというのも
前作とほぼ同じ。
前作では張函宇が刑事役だったけれど、今回の辣腕刑事は段奕宏です。
張函宇と同じ華誼兄弟所属の俳優で、同社製作のスパイ映画『風声』で
汪精衛政権の高官として登場、すぐに殺されてしまいますが、
ワンシーンながら印象的でした。
今回はその演技がたっぷり堪能でき、いい俳優だなあと改めて思います。

犯人役は前回と同じ鄧超。ただし、前回とは違い、今回は段亦宏の下で働く
協警という、刑事と同じ仕事をするのに正式な警官ではないという役どころ。
段奕宏演じる上司に疑われてると感じつつ、個人的には互いを認め合い、
捜査の過程では上司の命も救います。が、この2人の関係はちょっとホモっ
ぽい。
で、この命を救うシーンがすごい迫力です。
手すりも何もない高層ビルの上の狭い場所でのアクションシーンは
かなりの心臓破りなシーンで、
こんなことありえないと思いつつもハラハラのし通しでした。
映画の見せ場の一つです。

鄧超の共犯が『クレイジー・ストーン』の郭涛で、その郭涛と出会い、彼を愛して
しまうのが段奕宏の妹役の王洛丹。
王洛丹、陳凱歌の『捜索』で演技開眼したのか、最近はなかなかいい女優して
いますね。『いつかまた』でも良かった。

主演男優賞に輝いた3人と監督の写真がこれです。
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結論から言うと、設定に力が入りすぎていて、ちょっと無理やり感もなくはなく
特に3人がなぜ犯罪を犯したのか動機が弱いし、
その後、被害者の娘である難病の小さな女の子を育てているというのも
どうにも説得力がない設定です。
原作『太陽黒子』ではどう書かれているのか、ぜひ読まなくてはと
そのあたりに不満はあるものの、
最後まで目が離せず見せる迫力があるのもまた事実で、
確かに3人の男優の演技がそれに大きく貢献しています。
中国は本当に男優天国で上手い男優が多すぎです。

三人三様にいいのだけど、中でも鄧超は本当に入魂の演技でした。
『中国合夥人』も良かったけれど、いい俳優になったなあと思います。
ネタバレになりますが、最後に死刑になるシーンでの顔の表情など
ゾッとするような凄みがあり、
『奔跑吧、兄弟』なんてバラエティ番組で見せる素顔は
本当に明るくて楽しいキャラクターなのに、
こういう役を見るとまるで別人だから、役者ですね。


スターによる演技を楽しむのが『烈日灼心』ならば
その対極にある作品が『心迷宮』です。
全員素人かと思うほど名前を知っている役者が1人も登場しません。
でも上手いので明らかに素人ではない。

製作費もいまどきのバブル中国でなんと170万元。
フィルムでなくデジタルだからできる技とはいえ安すぎでしょう。
それでも見せるのは発想の妙ゆえ。
この何十倍かけて作られるあまたの凡作のなんと多いことか。

黒焦げの死体をめぐる山村の人々の(まあ確かに相当に地味な役者たち
だけれど山村にしては人材が豊富すぎかも)
それぞれの思惑と行動を時間軸をバラバラにして描くことで、
見事な推理サスペンスに仕上がっているのです。

監督脚本は30歳の忻鈺坤で、これが初監督作。26日間で撮影とのこと。
ただ発想の妙だけではなく、父と子、男の女のさまざまな感情や農村の人々の
意識をセリフで説明せずに描き出しています。
インディペンダント作品には自己満足映画が多いので、偏見があった私ですが
これには素直に感服しました。
日本でもこういうインディペンダント映画を紹介して欲しいものだと思います。

東京国際映画祭も上海国際映画祭と提携しているなら
『少年班』と『少年バビロン』2本と交換してほしかった。

『烈日灼心』も『心迷宮』もYOUTUBEで観られます。








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