風声

今回の姜文の映画に関して、私は単なる通訳ではなく、
コーディネーターも兼ねているので、次回の中国行きに
備えてのあれこれが帰国してからも続き、
さらに加えて、キネ旬の「中華電影データブック」のほうも
いよいよ最終の大詰めを迎えているため、
ずっと息をつく暇もないほど忙しかったのだが、それもひと段落したので、
早速観たのは今回北京で友人がくれた『風声』のDVD。

何しろ、あの『東京審判』の高群書監督だからなあと
一抹の不安があったのだが、観てみてびっくり。
ハリウッドやイギリスが得意とするナチ物にも負けない
ど迫力と緊張感のスパイ娯楽大作に仕上がっているではないか。
これは脚本と共同監督の陳国冨の力がおおいに寄与していそう。
目を覆うような残忍な拷問がちょっと、なのだが、
何しろ陳国冨はあの『ダブルビジョン』の監督だからねえ。
このあたりが姜文のスタッフたちから聞いていた
「変態映画」という評判の所以なのだろう。

『建国大業』並みのクオリティーの高い映像と特撮もさることながら、
この映画の最大の見所は、
周迅、李冰冰、王志文、張涵宇、黄暁明、蘇有朋、英達、
呉剛、倪大宏ら、個性の全く異なる役者たちの丁々発止
の演技の競い合い。キャスティングが巧妙すぎ。
特に相変わらずの天才女優ぶりをこれでもかと見せつける周迅と
しっとりと妖艶な李冰冰の2人が見事。
ストーリーは汪精衛傀儡政権内の共産党潜入スパイを
あぶりだすため、日本軍将校の黄暁明とその中国人部
下の王志文が、
周、李、張、蘇、英の5人の疑わしい暗号解読チームから
1人ずつ狙いを定めていく密室劇なのだが、
まあ、スパイの1人は最初からピンとくる。
でも、実はというどんでん返しはなかなか予想がつかなくて
そこが明らかにされていく過程が大変に面白かった。
陳国冨の脚本は、やはりさすがだなあ。

これ、日本での公開、難しいかなあ。
日本人、すごい悪役だけど、暁明がとってもかっこいい悪役
日本人を演じてるから、それに免じて公開にならないかしら。
きちんとした日本語で吹き替えてるし、逆に中国語の時は
わざと外国人訛りの中国語で吹き替えている。
(つまり暁明の本当の声は一切聞こえないんだけど)
所詮、娯楽作だから公開してもいいんじゃないかと思う。
実はこれも建国60周年の記念映画なんだけど、
『建国大業』よりはマーケットあると思う。
配給会社さん、いかがでしょう?

あまりに面白かったので早速、DVDと一緒に貰った原作を
読み始めています。
テレビドラマ『暗算』の麦家の原作なので期待できそう。

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この記事へのコメント

huimei
2009年11月29日 20:51
『風声』私も観ました、たった今~ナンテ偶然~
丁度公開時に北京に居たのですが、時間がなくて映画館に行けず、結局帰国してからDVDを買って見たのでした。拷問シーンはちょっと眼をそむけたくなりますが、クオリティの高い映画でした。暁明も好演してると思います。日本語は吹き替えって聞いてましたが、あの日本人訛の中国語も吹き替え??うう~彼のファンなのにわからず~しかし周迅は凄みあり。見終わってこの役は彼女しかあり得ないって思いました。何見ても彼女が出てさえいれば『彼女しかありえない』とか思ってしまう私です。本は私も持ってますが、難しすぎ…マダムのコメントを待ってます。
マダム・チャン
2009年12月01日 18:40
あれは暁明の声じゃないでしょう?
最近の中国の吹き替え技術はすごくて
一部本人の声も使ってミキシングするので
判別しにくくなってるようですね。
周迅でなく李冰冰が金馬奨主演女優賞
取ったのは、周迅ぐらいになると、ど
んなにすごい演技をしても彼女なら当
然、という受け止められ方をするので
大変だなあと思いました。でも、李冰
冰も良かった。「独自等待」「天下無
賊」「雲水謡」と彼女は着実に努力し
て、いい芝居してきたから報われて良
かったなあ、と思いました。

「風声」の小説も映画とはかなり違っ
ていて、面白いですよ。小説を読んで
ますます陳国冨の脚本に感服です。
LUNA
2009年12月04日 00:46
マダム・チャンさま

ご無沙汰しております。先だってはチェン・ボーリンの取材でお世話になり、ありがとうございました。
おかげさまでとても楽しい取材ができました(^o^)

「風声」、私も台湾でみて黄暁明の声がとても気になり、クレジットをメモして帰国しました。
工藤俊作さんという俳優さん。
この方が、日本語も中国語も(!)吹き替えられたようです。ご本人がブログをやっていらして、「風声」のお仕事の話も書かれていました。

映画そのものは、私は言葉の壁もあり、「う~ん」でありました。さすが「ダブル・ビジョン」の監督。
もしも字幕つきでみられる機会があっても、あの拷問シーンをもう一度みる勇気が・・・ないかもしれません(;_;)我ながらへたれです。

マダム・チャン
2009年12月04日 09:06
LUNAさん
どうも、ご無沙汰です。こちらこそ、楽しかった
です。取材相手をリラックスさせてお喋りのよう
に取材するベテランライターの技を見せていただ
きました。質問を用意して読むだけのつまらない
取材しか出来ないライターの多い中、貴重です。
(笑)

やはり、日本人の俳優さんでしたか。日本語の
台詞が上手いので、これは単に中国語のできる
日本人に読ませたのではないと感じました。中
国語の訛りも明らかに中国人がまねて下手にや
ってるのではなく、日本人らしい中国語でした
からね。
いや、原作を読むと全然違うんですよ。スパイ
も実は映画とは別の人。ここまで換骨奪胎した
陳国冨はすごいです。ここだけの話、「梅蘭芳」
も最初は陳国冨が脚本書いてて、そっちのほうが
実はずっと良かったんですよねえ。
拷問シーンは私も目をそらしてました。

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