東京国際映画祭2日目

今日は今年の映画祭で一番忙しい1日でした。
3本の作品のQ&Aの通訳と、それぞれの取材の通訳があったから
です。しかも、それぞれに興味深く、興奮するゲストとの出会いが。
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1本目は台湾映画の大御所、王童監督の7年ぶりの新作
『風の中の家族』。
自らも6歳で大陸から台湾に移ってきたという監督が描く
国民党の兵士3人の台湾でのその後の人生を描いた
大河ドラマであり、切ない愛の物語でもあります。

主演のヨーヨーこと、トニー・ヤン(写真真ん中)が成長しましたねえ。
デビュー作『夢遊ハワイ』、衝撃作『僕の恋、彼の恋』も東京国際
で上映され、公開時の来日通訳もしたので、親戚の子が成長した
のを見るような思いで観ました。
健康的で温かく、いかにもすくすくと育った男の子という感じだったので
軍隊を怪我で除隊し、血のつながらない子を育て、
大陸に残してきた妻子への思いから、自分を愛してくれる女性へ
の思いも断ち切る役柄がぴったりだったし、
63歳で亡くなるまでの父親役を見事に演じていたのには感無量。
いい役者になりました。

同じく、その義理の息子役を演じた、なんと、アン・リー監督の
次男の李淳ことメイソン・リーにも深い感慨を覚えました。
アン・リー監督の『ウェディング・バンケット』では生まれたばかりの
赤ちゃん役で出ていたのが彼。
『グリーン・ディステニー』でアン・リー監督が来日した時は
奥さんとお兄ちゃんと一緒に来ていて、監督の取材中に
「これからDEXお台場に行くんだ」と言っていた小学生の坊やが
もう25歳です。目元の感じがお父さんによく似ています。
俳優としても将来性を感じます。

映画はもうさすがの安定感で、多少古い手法ではあるものの、
丁寧な時代考証や演出が逆に非常に新鮮でした。
会場からの質問で、あのシーンは「ゴッドファーザー」へのオマージュですか
と聞かれた監督、
「その通り。でも、小津安二郎監督作へのオマージュのシーンもあるよ。
 どこだか分かるかい」と逆質問。
私はその2点には気づかなかったのですが
書店の露店とか、トニーが秘かに愛する女性の父親の逮捕の
シーンなどに、若くして亡くなった後輩エドワード・ヤン監督の
「クーリンチェ少年殺人事件」へのオマージュを感じました。
こんな大御所なのに最後は観客に深々とお辞儀をした王童監督に
こちらも頭が下がる思いでした。
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次は『百日草』、台湾で公開中のタイムリーな作品です。
前作『星空』を見て、若い男性なのになんと繊細な感性の監督と
思ったトム・リン監督、
この映画でますますその思いを強くしましたね。
2012年にご自身の奥さんを亡くした思いを吹っ切るために、
どうしてもこの作品を撮ることが必要だったとのことです。
(以下、ネタバレあり)

実は台北映画祭で上映した時、フィアンセを亡くした主人公のカリーナ・ラム
(『親密』以来、5年ぶりの映画主演。その間に結婚して2人の子のママに
なったのでだいぶふっくらしけたけど、相変わらず可愛らしく、いい女優
さんです)
がフィアンセの弟の張書豪と寝てしまうシーンが台湾では大不評で、
公開時にはそのシーンがカットされて上映されたとか。
今回も会場から中国語の質問でこのシーンのことが出ました。
それもはっきりベッドシーンと言わず、曖昧な言い方で、気持ちの処理の
方法が、という含みのある表現なので初めピンと来なかったぐらい。
当時の反応の大きさと台湾人の性のモラルの厳しさを感じた次第。
同じように知人と寝てしまう妻を亡くした男については何も文句が出なかった
らしいので余計に台湾人の保守性を感じます。
私は死んだフィアンセや妻が恋しいからこそ、他人のぬくもりを求めてしまう
気持ちはとてもよく分かると思います。

それにしてももう1人の妻を亡くした夫を演じた五月天の石頭、
彼もまたとても繊細な感受性の持ち主のようで、
ギタリストとのことですが、役者としての才能も非常にありと見ました。
そして、映画の中の役より本人のほうがかっこいいです。
チャン・チェンが初監督した短編では、引きこもりの役をやっているとか。
みんな、彼の中にある繊細を見抜いてのキャスティングなのでしょうね。

台湾映画2本で長くなってしまったので、中国映画についてはまた今度
書くことにします。




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この記事へのコメント

Grumbach
2015年10月27日 12:43
百日告別のカットシーンはそんな理由だったんですねえ。台北で一緒に観た友人とは石頭はいいのに男尊女卑じゃ!?とか言ってましたが台湾人て保守的なんですか。前に台湾のふつーの週刊誌で男性の下ネタの写真がふつーに載っていたのを見て(モザイクはかけてましたが)香港と違って台湾ってこっち方面は開放的なのねえなどと一人で納得していたので意外です。
そのあたり知り合いの台湾人にぜひ聞いてみたいです。
マダム・チャン
2015年10月27日 21:09
ひょっとすると婚約者の弟とだったからかも
しれませんが、それほどのベッドシーンでも
なかったですよね。

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