高倉型と三国型

一昨日、テレビで亡くなった高倉健の追悼のため
『幸せの黄色いハンカチ』を放映していた。
新ためて見直してみて、この映画の原作ってピート・ハミル
なのかあと驚くとともに、
映画として面白いのは武田鉄矢と桃井かおりが出ているからで
高倉健は確かに50代とは思えないほどかっこいいけれど
演技は木偶の坊だよなあと思った。
山田洋次監督は「高倉さんはカメラの前で立っているだけでいい」
と言ったそうで、そこに立っているだけでいいという俳優は確かに
稀有な存在だけど、そのためには脇を芸達者や個性派で固める
必要がある。
高倉さんの周りを素人ばかり起用した『単騎千里を走る』がダメ
なのは当然なのだった。

そう思って追い出したことがある。
魔鬼城という、中国のグランドキャニアンみたいなところで
『ヘブンアンドアース』を撮影していた時、
ほんとうに大渓谷以外何もない小さな片田舎の市場で
中井貴一さんと私が日本人と知った野菜売りのおやじが
「高倉健」と言い、そのことに感動した中井さんから聞いた話だ。

中井さんのお父さんの佐田啓二がたまたま三国連太郎の
台本を借りたことがあり、その台本にびっしりと書き込みが
してあるのを見て、
「俳優には二種類いる。その場の空気に溶け込む俳優と
細かく演技プランを立てて演技する俳優と」と言い、
確か佐田啓二は前者を自認し、三国連太郎は後者だと言った
ということだった。
その話をしてから、中井さんは
「今で言えば高倉さんが前者のタイプ。そして、(共演している)
姜文は三国さんタイプだなあ」と言い、
「自分は高倉さんを目指したい」と言ったのだった。


張芸謀は『単騎千里』を撮る前、来日宣伝に来るたびに
高倉健と会い、会った翌日は必ず私に
「革ジャンをもらった」「腕時計をもらった」と、高倉さんの
プレゼントを自慢して、熱狂的ファンぶりを示したので、
私が
「でも、俳優としては三国連太郎のほうがうまいと思う」
と言うと、心底驚いていた。
三国連太郎は日中合作の『未完の大局』にも出ているのだが
もっと若い時の名作、『飢餓海峡』なども北京電影学院時代に
見ているはずなのにと、
張芸謀が驚くことに私が驚いた覚えがある。

いつもは憎たらしい外交部のスポークスマン洪磊までが
その死に弔辞を発表するほど
中国人民に愛され、慕われた唯一の日本人俳優と
言っていい高倉健。
個人の魅力ももちろんあったと思うけれど、
『君よ憤怒の河を渉れ』で高倉さんが演じた
冤罪で追われながらも、正義を追求し、
冤罪を晴らす検察官という人間像に
終わったばかりの文革でたくさんの人が冤罪で苦しんだ
その傷がいかに深かったかということを考えないではいられない。

だから、若い男女だけでなく、年配の中国人までが
高倉さんの演じる杜丘に思い入れ、
1億人の中国人が見たという空前の大ヒットになったのだ。
中国人の琴線に触れた映画ということでは
たとえば近年で言えば『ラブレター』『おくりびと』がある。

私はかねてから打算的なと言って悪ければ現実的な
中国人に純愛はありえないと感じていたので
『ラブレター』が受けたのだろうと解釈していた。
『おくりびと』が中国人の心を打つのは
四川大地震で日本の救援隊が遺体を
掘り起こすたびに丁寧に黙祷し、死を悼んだ姿に
中国人が感動したことに通じる。

中国人と日本人は外見は似ているが
その精神性は相当に違う。
中国人に受ける映画は日本人にあって
中国人にないものを描くこと
というのがまずはポイントとみた。




ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 23

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス

この記事へのコメント

yukabon
2014年12月03日 09:54
初めまして。数年前からブログをこっそり拝見していました。
中国で生活していたこともあり、中国に愛着があります。
なぜ高倉健が中国でうけるのかずっと不思議だったのですが、この記事を読んで「なるほど」と思いました。

同じアジア人とはいえ、精神性の違いもさることながら、もしかすると日本人にはアメリカ人よりも理解できない国民でしょうね。
マダム・チャン
2014年12月04日 06:57
yukabonさん
こっそりと言わず、これからもコメントをお願いします。もちろん当時の中国の二枚目俳優というのが唐国
強とか朱時茂とか、甘い顔立ちが多く、高倉健さんの
ような男らしく精悍で寡黙というタイプが珍しかった
ということもあるらしいんですが、役柄によるところ
が大きかったというのはおおいに納得ですよね。

この記事へのトラックバック