マダム・チャンの日記

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS 『呉清源 極みの棋譜』鑑賞

<<   作成日時 : 2007/07/13 05:54   >>

トラックバック 0 / コメント 8

上海国際映画祭で監督賞と撮影賞を受賞しながら、口の悪い中国の
マスコミに「超級悶片」と叩かれた『呉清源』を試写にて鑑賞。
田壮壮は『春の惑い』以来、その枯淡の境地がまさに張芸謀、陳凱歌
と正逆を行っている。
侯孝賢といい、田壮壮といい、若い時にやんちゃだった男ほど、
中年を過ぎたばかりで早くも枯れはじめるというのが興味深い。

日中戦争が始まった日本で暮らす中国人という微妙な立場から、
「政治に不干渉」という精神に解脱を求めて、紅卍会という新興
宗教に入信するも、日本のリーダーの1人の独善に絶望して、
苦悩するあたりが少し分かりづらいが、
戦前から戦後にかけての日本の暗く、でも静謐な雰囲気を伝えて、
日本映画よりも日本的というのは、ある意味、見事である。
衣装と美術に日本人を擁しているとはいえ、その手腕には感嘆する
ほかない。
特に徴兵検査の雰囲気、原爆の描写、小田原の海の様子などは
素晴らしいの一言だし、私が物心ついたばかりの60年代初めの日本の
通りの様子など、記憶のままの原風景がそこにあることに驚く。
監督とカメラマンが相当、古い日本映画を観て研究しまくったと
思われる。
監督賞と撮影賞はだてじゃない。

役者もいい。
張震は一昔前の男を演じられる唯一の若手中華圏俳優ではないだろうか。
脇を固める日中のベテランがまた重厚な演技で張震を支えている。
紅卍会の中国の教主役で友情出演の監督の従妹の夫である李雪健、
母親役のシルビア・チャン、日本の師匠を演じた柄本明、
後見人を演じる米倉斉加年、信者の1人の宇都宮雅代(この2人は老け
すぎてて後でキャストを見るまでは誰だか分からなかったけど)、
『未完の大局』でも日中のベテランが若い主人公を支えていたことを
懐かしく思い出す名演技でした。
こういう熟練の演技を見ると、年を取ることの価値を感じて、いい気分になれる。
松坂慶子の役だけは「?」だったけど、彼女の出演は相変わらず松坂慶子ファンの
多い中国人観客へのサービスだったのだろう。

映画が終わって、夜は友人に誘われて、劇団四季の視察に来ている
上海戯劇学院の先生たちと浜松町で食事。
副院長の張老師は上海国際映画祭の作品選定委員の1人だったというので、
映画談義で盛り上がる。
張老師曰く、「最近の中国は魯迅だの、梅蘭芳だの、呉清源だのと
近代の偉人の伝記を好んで撮りたがる傾向にあるが、
本人や近親者がまだ生きている人たちのドラマを撮るのは難しいよ。
本当のことを描けば描いたでいろいろと差し障りがあるし、想像で膨らませて
あることないことを描くわけにもいかないので、精彩に富んだドラマになりづらいからね。」
『呉清源』も、まだご健在の本人(冒頭にご夫婦で出てくるが、ちっともぼけてなくて
いい顔をしていらっしゃる)に気を遣って、抑えて抑えて撮っているところに、
中国人にさえ「退屈」と言われてしまった要因があるのだろう。
その抑えたところが却って渋い魅力につながってはいるのだが。

余談 張老師と「浜松町」の「浜」を「bin」と読むか、「bang」と読むかで
    議論。先生は「沙家浜も陸家浜もbangだから、bangだろう。」と
    いかにも上海の芝居の先生らしい説を披露。
    それに対して、日本語では「浜」は「濱」の簡略字体だから、
    「浜松」も元は「濱松」だったと思われるから、「bin」ではと私。
    帰って調べると、中国語の「浜」は小川の意とある。
    「浜の真砂」というように日本語の「浜」は海岸の意。
    昔はもっと海沿いにあったはずの浜松町は、横浜を「hengbin」と読むと同じく
    やっぱり「bin song ding」だと思う。

設定テーマ

注目テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
試写ってことは、日本でも公開予定なのですね。
「戦時下の日本の中国人」って面白そう。
松坂慶子が中国で人気者だとは初耳でした。
山口百恵や高倉健みたいな存在なのでしょうか。

『春の惑い』は風に揺れるチャイナドレスが印象的でした。
とてもきれいな映画だったと思います。
私は妙に、カンシャク持ちの旦那さんに肩入れしてしまったので、
ラストはほっとしました(笑)
リメイクらしいですね?古いオリジナルも観てみたい。

でも、候孝賢は3度くらい頑張ったけど、最後まで見られない。
彼の評価の根拠は何でしょうか。
mudanjiang
2007/07/13 16:42
百恵ちゃんや健さんは老若男女にファンがいたと思いますが
松坂慶子さんファンは中国でも成人男子限定かと(笑)。
東京国際映画祭の閉幕式で松坂さんが後ろに座ってて、
『ココシリ』の陸川までが興奮してましたから。
『春の惑い』の旦那じゃないほうも『呉清源』に
張震の兄役でチラリと出ています。
私は『百年恋歌』の一部と二部はツボでした。
切なかった。『フラワーズオブシャンハイ』は
衣装とインテリアがツボ。ベストはもちろん
『悲情城市』ですが。
作品によって当たり外れの大きいところも
田壮壮と侯孝賢って似ているかも。
マダム・チャン
2007/07/13 17:49
この映画は張震の和服姿が見られるんでしたっけ?脇の面々の名前を聞いて、見たいな〜って思いました。今ちょうど新上海灘を観ているのですが、新上海灘の李雪健「黒い」顔と「父」の顔の二つが交錯するあたりがすごくウマイですよね。
心雨
2007/07/15 23:57
そうなんです。この上海マフィアのボスは有名な杜月笙が
モデルで、『上海ルージュ』では李宝田がやはり好演して
います。その時、李雪健は冒頭で早々と浴室で殺されてし
まう使用人の役。あれから12年、見事に李宝田を上回る
造型でしたねえ。
『至福のとき』の頃、鼻の癌を患ったと聞いて心配して
いたのですが、元気になられたようで、ますます凄みが
増してきたみたいです。
『呉清源』でも、米倉斉加年と共にほんのワンシーン出
演なんですが、それだけで映画に重厚さが加わってます。
すごいです。
マダム・チャン
2007/07/16 05:30
呉清源氏ご本人を調べているうち、私もがぜん楽しみになってきました。ご本人素敵!着物も扇子の持ち方も様になって。張震だったら和服がきっと似合うと思います。(男の着物萌えには)今一番に観たい映画になりました。
マダム、お願い。プレミアで張震と呉清源氏を和服で招待して下さい。必ず行きます。(奥様にも興味あります!)
『梅蘭芳』と公開時期が同じになったら美男対決ですよねえ。
孝姐
2007/07/18 19:38
ご本人も着物が好きだったみたいですね。
日中開戦間もない時に着物姿で天津の兄
(『春の惑い』の辛柏青)を訪ねて行き、
迷惑がられるシーンがありました。
監督と張震、来日するみたいですよ。
監督が呉氏に上海でのプレミアに来て
欲しかった、と言ってたから、日本では
是非ご覧になっていただきたいですよねえ。
それとも、もうご覧になったのかな。
マダム・チャン
2007/07/19 07:37
ははは、「浜松町」のことをよく調べましたよね。
私は昔も「bin song ding」か「bang song ding」か迷いました。
調べた
2007/07/20 16:16
中国人はやっぱり迷うみたいですね。
日本人は「浜」=「濱」だと思ってるから
悩まない。
こういう日本の新字体と旧字体が中国では別の
漢字であるというのも不便なもので、
「雲」「芸」あたりもよく間違えます。
マダム・チャン
2007/07/20 17:11

コメントする help

ニックネーム
本 文