マダム・チャンの日記

アクセスカウンタ

help RSS もっと漢字を!

<<   作成日時 : 2006/10/01 07:36   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 9

翻訳が終わったばかりの作品の人名表記が問題になる。
時代劇だし、私としては漢字表記が良いのでは、と思うのだが、
配給会社側はカタカナ表記を希望。実はこれは、いつも配給会社
との間でせめぎ合いになる問題。

『HERO』の時は監督が人名の漢字にも意味があるので、そのままで
と言われたのが通り、珍しく漢字表記になった。その流れで、『LOVERS』
も漢字表記に。その代わり、タイトルは横文字になってしまったけど。
『ウインターソング』は配給会社は何も言わなかったのだが、試写を見た
ライターさんから「なぜカタカナ表記じゃないのか」との声が出たそう。
これは孫納が見東に名を聞かれて、「老孫」と呼んで、友だちは「孫呉空」
と呼ぶけど、と答えるから、カタカナ表記には出来なかったのだ。
だって、「スン」と呼んで、友だちは「孫悟空」と…じゃ、何のことだか分からない
ではないか。

そもそも日本人はカタカナより漢字のほうが絶対に記憶定着率が高いと思う
のだが、最近の日本人はそうではないのだろうか。
登場人物の人名表記が漢字だと、字幕に漢字が多くなりすぎて、見づらくなると
言うのだが、漢字仮名混じり文のほうが読む速度も早いはず。
いつから、日本人はカタカナ表記ばかりを好むようになったのだ?

映画のタイトルだって、昔は『旅愁』とか『慕情』とか日本語のいいタイトルが
たくさんあったのに、今はタイトルから内容が推測できないようなものばかり。
『グリーン・デスティニー』『インファナル・アフェア』なんて、公開当時意味不明
だった人も多いはず。原題の『臥虎蔵龍』『無間道』で何がいけないのか、
さっぱり分からない。こっちのほうが、ずっと意味が分かる。
配給会社の言い分は、漢字タイトルだといかにもアジア映画っぽくて、
お客さんが呼べない、ということらしい。
カタカナならハリウッド映画と勘違いして見に来るとでも言うのだろうか。

登場人物の名は百歩譲って我慢するとしても、実際問題として困るのは、
漢字さえ併記してくれれば問題ないのにカタカナ表記だけにすることから
くる混乱だ。
『単騎、千里を走る』に姜文が出演しているという誤報は、ガイド役の女の
子の蒋文をジアン・ウェンと表記したため。
それとは逆に、作品によってカタカナ表記が微妙に違うため、同一人物か
どうか確信が持てないこともよくある。
お願いだから、()にして漢字を書いてくれ。
ついでに言うと、自分が字幕を担当したのでない作品を通訳する時も
とても困るのだ。カタカナ表記を見ただけじゃ、発音ができないから。

中国人の名が中国語ピンイン表記であることを知らず、勝手に英語読み
することからくる間違いも多い。
チャン・ツィイーという日本通用名はベルリン映画祭で初めて『初恋のきた道』
を見た映画ライターが「Ziyi」を似ても似つかぬ「ツィイー」と書いて、
雑誌『フィガロ』に紹介したため、それが定着してしまった、と私は睨んでいる。
「パイキャッソーとは俺のことかとピカソ言い」ならぬ
「チャン・ツィイーとは私のことかと章子怡言い」である。
つい、この間も『我愛NI』と『緑茶』をDVD化するにあたり、せっかく私は
劇場版は漢字で押し通したのに、カタカナ表記にすると言われ、チェック
したら、さっそく「ツィイー」と同じ間違いをあちこちでしている。
「ju」は中国語では「ジュ」と読まないし、「liang」も正確には「リャン」じゃ
ない。何のために劇場版で初出の時にルビをつけてるのだ?
カタカナに変えるのなら、そのぐらい気を遣って欲しいものだ。

私はついに連載が終わってしまった週刊文春の高島俊男先生の「お言葉ですが」
の大ファンだったが、高島先生のように日本語の乱れに怒りを覚えることが多い
のは、私が年を取ったせいだけではないと思う。
日本人の国語能力は確実に低下している。
漢字離れ、ひいては教養の低下と学校教育のレベル低下の根っこは同じだ。
80年代半ばに「ゆとり」学習指導要領が導入されると、長年日本人の国語表現力と
教養を培ってきた高校の漢文も必修ではなくなってしまった。
息子の学校の生徒名簿を見ると、日本人だか外人だか分からないようなカタカナ名
や、漢字の意味も何も無視した漢字当て字名前の氾濫に、最近は怒りを通り越して、
暗澹たる気持ちになる。親の知的レベルが知れるというものだ。
小学校から英語なんか授業でやるより、漢文の素読でもやらせたほうがずっと
いいと私は思う。

追記 当該作品の字幕製作担当の方に「私も個人的には漢字表記がいいんです。
    HEROの残剣や飛雪は読みが分からなくても印象に残りましたものね。」
    と言われる。皆さん、結構、このブログを読んでくださっているようで(汗)。
    


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
[映画]『フラワーズ・オブ・シャンハイ(海上花)』(侯孝賢)[C1998-06]
昼食後の二本目は『フラワーズ・オブ・シャンハイ』。“最好的時光”(『百年恋歌』)の“自由夢”(第二話)があまりにもすばらしかったため、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』を観直さなければと思っていたところ。スクリーンで観るのは二回目。スクリーン以外では全く観てお ...続きを見る
実録 亞細亞とキネマと旅鴉
2006/10/18 22:38

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
もしかしてログは初めてかもかも、です。いつもありがとうございます。マダムほどの方でもやはり「せめぎあい」があるのですねー。うんうん、って大きく頷きながら読ませていただきました。今私がやってるのは、初出だけじゃなく出て来るたびに全部ルビつきの名前。しかもフルネームじゃない。登場人物が多すぎて、姓にすれば同じ名前が登場するので苦肉の策。まだまだ今後も暗中模索状態(時々自己嫌悪)が続きます。
もにかる
2006/10/01 13:12
もにかるさん
いらっしゃいませ。そうなんですよ。表記以外にも、こういう表現は
今の若い人には分からない、と書き換えをした例もいろいろあります。
それもこれも若い人の活字離れのせいなんでしょうねえ。特に時代劇
は難しいです。だって、ある程度は古めかしい表現を使わないと、雰
囲気でないじゃないですか。半ばをすぎたドラマの翻訳、頑張ってく
ださいね。舞台挨拶やティーチインの時などで最前列で好奇心に目を
らんらんとさせて、食い入るようにゲストの発言を聞いているもにか
るさんを見ると、いつも「好奇心害死猫」という諺を連想します。
(そういうタイトルの映画も出来ましたね。)すみません。何となく
イメージが猫っぽいので。
マダム・チャン
2006/10/01 15:22
早速ありがとうございます(恥)。食い入るように…ですか、やっぱり(爆)。香港(製作)の最近の時代劇、とくにテレビは、セリフはやけに今っぽいです。流行語や新しいカルチャーを、あらすじと関係ない部分に散りばめる。それが香港の面白さでもあるんですが、それはそれでNGになりまして、んー、残念しごくって感じ。マダムも映画祭の字幕→通訳と、1年でいちばんお忙しい時期に突入、どうぞ「のど」お大事に!(ほら、ディランの時…)
もにかる
2006/10/01 16:13
チャン・ツィイーってやっぱりおかしいですよね?!こんなのどうやって発音するんだといつも思っていました。私はいつもチャン・ツーイーで押し通しているのですが、件の映画ライターさんにはそう聞こえたのでしょうか。
漢文が高校の必修からはずれたということは、大学受験にも出ませんね。息子の中学では漢文の授業がありますが、好きという子は少ないみたいです。息子たちの高笑いが聞こえてきそう…こいつらの教養が心配だ。。
ゆり
2006/10/01 16:45
もにかるさん
ありがとうございます。私は風邪ひくとすぐに
声が出なくなるので、今月は特に気をつけないと。

ゆりさん
ねえ?英語がグローバルスタンダードと思うなよって
やつですよね。
80年代の半ばに、それまで現代国語、古文、漢文と独立
していた教科書が国語T国語Uになって、古文も漢文も
その中で少しだけ教えるようになったのですが、今はも
っと減っているはずです。私立の中高一貫校はたぶん中
学でその国語TU程度の漢文を教えているのでは?
せいぜい簡単な返り点の読み方と故事成語、唐詩
ぐらいではないかと思います。漢文の要を得て簡潔
な表現を学ぶことは文章表現力にも役立つはずなん
ですけどねえ。
私は高校時代、『長恨歌』を丸暗記されられました。
いまだに部分部分は暗誦できます。史記の『項羽と
劉邦』を習った一学年上の先輩たちは文化祭で『覇王
別姫』を劇にして上演したりしていました。
映画『さらば、わが愛』で覇王が「騅いかず」と嘆く
台詞が「馬が歩かない」と字幕で訳されてた時はガクッ
となりましたけど。英語から訳してたから。
マダム・チャン
2006/10/01 17:13
まったくごもっともですよ…絶対イメージが広がる漢字表記でお願いしたいですよ。「残剣」が「チャンコン」、「飛雪」が「フェイシュエ」にならなくて本当によかったです。マダム、ありがとうございます<(_ _)>
まあ確かに日本の漢字にない漢字だと、誰にも読めないので気配りが必要かもしれませんが…。梁詠[王其]の[王其]の字や、スー・チー舒淇ちゃんの[淇]、ほかに[雨/文]、[女亭][王韋]の字は、パソコンでは表記できるものできないものがあり、苦労です。
ディラン・クォとアーロン・クォック、両方とも郭くんなのにね。ジャッキー・チュンとレスリー・チャン(チェン)も同じ張さんなのにね。(でもカリーナ・ラウ劉嘉玲とカレーナ・ラム林嘉欣は書き分けてほしかった…もうカリーナ・ラムで定着するんですね…泣)
あとは海外ミステリー小説を文庫本で読んでいると「チャング」「ポング」「トング」なんてぇチャイニーズの名前が続出で、「違うんやぁ! ChangやPongやTongのgは発音しないんだぁぁ! それはピンインなんやぁ!」と独りで哀しく呟いてます。
nancix
2006/10/01 18:56
そう!香港俳優の姓の不統一についてはかねてから
私も疑問を持っていました。北京語では「チャン」
ですが、広東語は「チャン」なのか、「チュン」な
のか。「劉」も「ラウ」なのに、なぜ「林」と同じ
「ラム」になるの?アンディは「ラウ」じゃないで
すか。
本当言うと、港台の俳優の英語名も私には年ととも
に、ますます覚えづらくなっています。同じ港台の
人には英語名で通じるんですが、大陸の監督たちに
は、まだ漢字名北京語読みでないと通じないので。
こうした人名の暗記訓練がボケ防止に役立つのを
願うのみです…。
マダム・チャン
2006/10/01 19:22
はじめまして。10年くらい前に張國榮のファンになってから中華文化、東アジアにつぃて色々考えるようになりました。何一つ香港のことも知らなかった私が、アチラの映画に興味を持った途端に俳優を広東語読み、北京語読み、英語名のカタカナ読みの三本立てで名前を覚えないといけないことに。最初、本当に面食らいました。章子怡の変な読み方、ずっと気になってます〜。
先日、中国に詳しいライターさんとも話していたのですが、日本ではアジアを「エネルギッシュで
キッチュ」という視点でしか認めようとしないところがあるね、と。ちょっとお安いものの扱いを感じ、時々カチンときます。ハリウッドスターの記事なら気にすることも、アジアのスターならこんなもんじゃなぁい?というスタンスが感じとれて、ヤだなーと。。。
(マダム・チャンさんのこのブログを知り合いにも読んで欲しくて、リンクさせていただきました。→ http://oneday55.exblog.jp/ )
kadoorie-ave
2006/10/02 01:20
kadoorie-aveさん
はじめまして。リンク、ありがとうござい
ます。私ものぞかせていただきますね。
そうですねえ。でも、ここ10年でだいぶ状況は
変わりつつはあるんです。10年前は中国映画を
コロンビアやFOXやワーナーが配給するなんて
考えられなかったですもの。
思いおこせば30年近く前、大学の附属の女子高で
私が大学では中国文学科に行くと言うと、仏文科
に行くのが多数派だった同級生たちには、「なん
でー?」と、まるで奇人変人扱いされましたが、
最近は同窓会などで会うと、「先見の明があった
わね」と言われます。仏文は今は「不喫香」です
からね。フランス映画もふるわないし。
マダム・チャン
2006/10/02 07:18

コメントする help

ニックネーム
本 文
もっと漢字を! マダム・チャンの日記/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]